ブランディング・ワークショップについて(2)事例(6W2H)分析

古賀デザインブログ
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意外となおざりになっている顧客リスト

前回の「3C分析」に引き続き、環境分析について述べたいと思います。今回は「事例分析」についてです。

事例分析とは、これまで自社商品やサービスのユーザーとなった方々を細かく見直してみることです。併せて、失注(直前まで行ったのだが、購入や契約に至らなかった。他社に流れてしまった)した事例についても分析してみることです。事例分析をすることで、自社がターゲットとする層やアプローチの手法、そして自社の提供価値の伝え方や社内体制について見えてくることがたくさんあるのです。

しかし、お話しするさまざまな企業様では、これまでのユーザーについてあらためて検証することは少なく、いわゆる顧客リストは訪問アポやDMを出すのに使う程度で、その分析は意外となおざりになっている場合が多いのです。ましてや、失注事例についは嫌な思い出が重なる場合もあるようで、目を背けることが多いようです。これでは、せっかくのお宝が眠ってしまっているのと同じです。

購入・契約事例や失注事例がなぜ「お宝」なのか? また、事例の分析方法について、以下に述べたいと思います。

事例分析で「リアルな」ユーザー像が見えてくる

マーケティングや広告のセミナーなどに参加すると、よく「まず、ペルソナを決めましょう」と講師の方が説明します。「ペルソナ(persona)」とは、商品やサービスの典型的なユーザー像のことで、マーケティングにおいて活用される概念です。架空のユーザー像をイメージすることで、そのユーザーのニーズを満たす商品開発やブランディングを考えていきます。

ペルソナを想定すること自体はとても合理的な手法です。しかし、ワークショプで実際にやってみると、「そんな人は実在しないでしょ!」「本当に、そのような方が御社のユーザーになります?」みたいな、高い理想像のペルソナを想定しがちです。TVに出演する有名人やオシャレ系雑誌の読者モデルでしか見ないようなペルソナです。やはり、「うちの顧客はこうあって欲しい」という願望がついつい出てしまうのでしょう。

でも、そのようなペルソナをイメージしていては、正確な商品開発やブランディングはできっこありません。そこで役立つのが、購入・成約事例の分析だと私は考えています。

事例分析は6W2Hについて書き出す

事例分析は、次の8つ(6W2H)について書き出します。過去のことで記憶が曖昧かもしれませんが、下記にあるようなシートを作り、できるだけ具体的に書き出すのがコツです。

1)Who:誰が?(担当)
2)Whom:誰に?(お客様)
3)What:何を?(提供したもの)
4)How:どのように?(その手法)
5)Why:なぜ?(顧客要望)
6)When:いつ?(時期)
7)Where:どこで?(場所・状況)
8)How much:いくらで(価格)

購入・成約事例について、できるだけたくさん書き出します。そうしている内に、何らかの共通項が見えてくる場合があります。それが、自分たちの商品やサービスに対して対価を払ってくれている「等身大のペルソナ」となってきます。さらに、その中から、「気持ちよくビジネスができた事例」を絞っていき、なぜ「気持ちよかったのか?」を分析することで、今後ターゲットとしていく顧客像が見えてきます。そして、この顧客像、あるいはそこを起点に考えた顧客イメージを自社商品やサービスを提供するペルソナと規定すべきなのです。

思い返すのもイヤだけど失注事例についても書き出す

気が乗らないかもしれませんが、失注事例についても6W2Hを書き出してみましょう。失注した原因が価格だったのか、ユーザーの要望を満足させることができなかったためなのか、他社との比較で劣っている点があったのか、ユーザー側に問題があったのか、何らかの傾向、あるいは要因が見えてくることがあります。

これらの傾向や要因は、今後、改善のしていくべき重要なポイントとなってくるのは、誰でもわかることでしょう。その一方で、「失注に至りやすいユーザーを引き付けない工夫」も必要となってきます。結果的に失注に至るユーザーとの商談やコミュニケーションは「時間泥棒」です。本来、成約に至るユーザーに使うべき時間を横取りされてしまっているのです。できるだけ時間を有効に使うために、失注に至るユーザーをフィルタリングするのも、またブランディングの目的の一つなのです。

事例はコストゼロの「お宝」

顧客リストやそこにある購入・成約者、あるいは失注者のとのやりとりで得た自社に対する「生の声」は、調査会社のアンケートなどとは比べ物にならない「お宝」です。おまけに収集にかかるコストはゼロです。しかし、その多くはベテラン社員の「暗黙知(個人の技術やノウハウ)」になってしまっており、社員全員が共有できる「形式知」にはなっておらず、十分に生かしきれていないケースを多々目にします。なんとももったいない話です。みなさんも自社の顧客リストをいま一度見返し、関係者一同でディスカッションしてみてはいかがでしょうか?

以上が、「事例分析のすすめ」でした。
「環境分析」には、戦略目標を最終的に整理する「SWOT分析」がありますが、SWOT分析自体についての説明はネットで検索すると山のようにヒットするので、そちらに譲るようにします。

次回は、SWOT分析によって整理できた「強み」と「機会」からの「基本戦略」への落とし込みについてご紹介したいと考えます。

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