「環境分析」で集めた情報はSWOT分析で整理する

前回のブログでは、「事例分析」についてその重要性をお伝えしました。自社のこれまでの購入・成約事例、あるいは逆に失注したときの事例を客観的に分析することで、お客様から評価されている部分と評価されていない部分、あるいは、自分たちは頑張っているつもりなんだけど、お客様に伝わっていない部分などが浮き彫りになってきます。

この事例分析に加えて、業界環境分析(3C分析)によって集めた「Customer(市場環境・顧客)」「Competitor(競合環境)」「Company(自社環境)」に関する情報を評価軸に落とし込むのがSWOT分析です。SWOT分析についての詳しい説明は他のWebサイトやビジネス書におまかせしますが、ざっくり言えば環境分析で集めた情報を「自社の強み(S)」「自社の弱み(W)」「業界や社会環境の追い風(O)」「業界や社会環境の向かい風(T)」の4つに仕分けましょうということです。

SWOT分析〜基本戦略

「自社の弱み(W)」はひとまず放置する

SWOT分析で仕分けただけでは何の戦略も生まれません。ということで、ここからが「基本戦略」のフェーズです。基本戦略においては、SWOT分析をベースにするのがセオリーです。「業界や社会環境の追い風(O)」の中で発揮できる「自社の強み(S)」が攻めの基本戦略です。さらに、「業界や社会環境の向かい風(T)」自体を変えることはできませんが、いまある社内のリソースを工夫することにより「追い風」として利用できないか?を考えるのが頭の使いどころです。

一方、「自社の弱み(W)」について多くのビジネス書では「補強する手立てを考えましょう」と唱えられていますが、私は「とりあえずはあきらめるべき」だと考えています。その理由は、「自社の弱み(W)」は、地理的な要因であったり、費用のかかる設備投資に関わることだったりと、早急には手立てできない中長期的な課題が多いことです。手立てを考えているうちに、戦略づくり全体が先送りになってしまうリスクがあります。

さらに、「自社の弱み(W)」で圧倒的に多いのが「人材」に関することです。適材がいなことや経験知が少ないこと、年齢構成のバランスなどです。しかし、これこそ自社だけで解決できるものではありません。人材募集をかければジャンジャン応募のくる名のしれた企業であれば、思い通りの人材を集めることができるかもしれませんが、中小企業となると、求人広告を出しても反応なし。応募があっても求めている人材には程遠いのが常だからです。だからといって「人がいないからできない」と言っていても何も進みません。今いる人材で何ができるのかを考えるほうが建設的ではないでしょうか。

弱みや課題の無い組織はひとつとしてありません。そこを悔やんでもしかたありません。とりあえずあきらめましょう。中長期的には改善をしていかないといけませんが、基本戦略を立案できないことの口実になってはいけないということです。

基本戦略は「誰に何を」を明確にする

基本戦略に戻りましょう。基本戦略で大切なのは、それを「誰に対して、何を(どのような提供価値あるいは便益)を与えるものなのか?」に翻訳できるかどうか、ということです。つまり、「売上目標100億円」や「地球社会に貢献する」は基本戦略といえません。また、「すべての国民に安心をあたえる」のようなものでは、あまりにも漠然としすぎです。「誰」と「提供価値」が具体的であればあるほど、また、絞れば絞るほど目標が明確になり、スタッフ全員が共有しやすくなります。

例として古賀デザインの「誰に何を」を紹介すれば、「小規模事業者に、低コストで導入できるブランディング戦略の成功体験を与える」ということになるでしょう。予算が潤沢にある大企業しかできなと思われていたブランディングを、小規模事業者でも導入できるようにシステム化したり実施サポートをするのが古賀デザインの生きる道(=経営のための基本戦略)だと考えています。

ビジネスとは結局コミュニケーションだと私は考えています。相手をしっかりと把握あるいは想定して、何を伝えたいかを考えておかなければ、コミュニケーションは成立しないのです。

基本戦略はVRIO分析でチェックする

「基本戦略はできあがった。でも船出した先はレッドオーシャン…」では前途多難です。レッドオーシャンとは、競合会社がひしめき合っている戦闘状態です。そんなところに後発で飛び込んでも歯が立たないのは容易に想像できるところです。基本戦略は競合が少なく、また、新たな競合が生まれた場合でも、容易に真似できない独自性があることが大切です。

この、基本戦略を実行して大丈夫か?をチェックするのが「VRIO分析」です。VRIO分析は比較的新しいフレームワークということもあり、SWOT分析ほどメジャーではありませんが、使い勝手の良いフレームワークです。また、基本戦略だけでなく、「技術開発」や「資金調達」、「販売チャネル」など、さまざまな経営資源を評価できます。

評価の軸は「V:Value(経済的な価値)」、「R:Rareness(希少性)」 、「I:Imitability(模倣可能性)」、「O:Organization(組織)」の4つです。ちゃんと利益が出て、いままでなかった商品やサービスであり、後発の会社が容易に真似できない戦略であること。そして、その戦略を実行できる組織があることを評価します。

VRIO分析

上記4つのうち、「V:Value(経済的な価値)」、「R:Rareness(希少性)」 、「I:Imitability(模倣可能性)」を判断するためには、「Customer(市場環境・顧客)」や「Competitor(競合環境)」を知っておく必要があります。そういった点でも、前々回のブログでお伝えした「3C分析こそがワークショップ全体の中で最重要のフェーズ」ということになってくるのです。

また、VRIOの4つの中で、意外と落とし穴になるのが「O:Organization(組織)」。計画はしたものの、運用できる体制が組めなかったり、途中で空中分解してしまうことです。私がこれまで関わったお仕事でも、「Webマーケティングはコンテンツの更新がキモ」でスタートしたが、運用スタッフが他の業務に手を取られ更新がストップ、結果的にサイトは塩漬けみたいなことがいくつかありました。それ以降、Webマーケティングの戦略立案時には、運用組織のある/なしを必ずチェックするようにしています。

VRIO分析の結果、基本戦略がいけそうだと判断できたら、「具体的施策」に落とし込んでいくことになりますが、それは次回のブログで。

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