ワークショップの最重要は業界環境分析(3C分析)

前回のブログでは、古賀デザインのブランディング・ワークショップの全体の流れと特徴について説明しました。今回から数回は、それぞれのステップについてもう少し詳しく解説していきたいと思います。

今回は「業界環境分析(3C分析)」のフェーズについて。一般的に、3C分析は「基本戦略」や、その先の「具体的施策」を立てるためのウォーミングアップや前さばき的な位置付けにされることがほとんどです。しかし、実は3C分析こそがワークショップ全体の中で最重要のフェーズであると私は考えています。

古賀デザインワークショップフロー

3C分析をなめちゃいけない

環境分析手法の中で最もオーソドックスなのが「3C分析」ではないでしょうか。どのブランディングやマーケティングの教科書にも載っているフレームワークです。「Customer(市場環境・顧客)」、「Competitor(競合環境)」、「Company(自社環境)」の3つの観点から業界環境を分析するため、それぞれの頭文字を取って3C分析と呼ばれています。「3C分析」で検索すれば、解説するサイトは山ほどありますから、詳しい説明はそちらに譲りますが、大切なのは「3C分析をなめちゃいけない」ということです。

ブランディングプロジェクトに関わって行く中で、時として思うような成果につながらないことがあります。そのような時、そこへ至るまでのプロセスをあらためて振り返ってみると、「3C分析が甘かった」ということが往々にしてあります。市場環境の変化を捉えていなかったり、顧客のことを理解していなかったり、ライバル会社をずっと下に見ていたはずが、とっくに追い抜かれていたりといったことです。その多くの理由は「慢心」にあります。「市場環境や顧客、競合企業についてはそこそこ知っているから大丈夫。いまさら細かく調べる必要はない」といった思い込みです。そして、その慢心が致命的な結果を招くのが「Company(自社環境)」の分析においてです。

自社環境分析では、弱みをさらけ出した方が勝ち

ブランディングプロジェクトが失敗に終わったり空中分解してしまう最大の要因は、「Company(自社環境)」の分析の精度の甘さです。自社を客観視できていないため正しい出発点に立てないのです。言うなれば、山登りをするときにいきなり誤った登山口から登り始めるようなものです。これではちゃんと山頂に到れるわけがありません。

「精度の甘さ」って具体的になんでしょう? ひとつは「買い被り」です。市場の評価以上に自社の商品やサービスを高く評価してしまうことにあると言えるでしょう。ビジネスをする以上、自信のある商品やサービスを提供するのは当然のことです。だからと言って、市場の評価以上に自信を持ってしまうことは禁物です。「ウチがNo.1!」と思い込むと、競合他社より劣っている点について無意識のうちに目をそらすようになります。あるいは、気がついてもさまざまな言い訳をするようになります。その結果、改良や改善する努力がおろそかになってしまいます。そして、それが積み重なることにより、競合他社との差が徐々に広がってしまうのです。気がついた時には差を埋めるのが難しい状態に陥っており、挽回が不可能なことも。そうなればジ・エンドです。

Company(自社環境)の分析の精度が甘くなるもう一つの理由が、上司や経営陣、他部門への「忖度(そんたく)」です。ワークショップの場で上司や経営陣の顔色をうかがってしまい、自社の弱みや欠点について本当のことを言えないため、改善すべき点に蓋がされてしまう状況です。「会議ばかりしていて物事が進まない」「ボトムアップの仕組みがない」「商品デザイン力がイマイチ」「企画が他社の二番煎じばかり」などなど、上司や経営陣、当該部門のスタッフを目の前にしてはなかなか言えないというのが正直なところです。そのような理由から、ワークショップを開く際には私が外部の中立な立場の人間として進行役を司り、またワークショップに参加するメンバーのルールとして「役職や所属の壁は取り払う」としています。しかし、中には発言内容に対して根に持つ方がいる可能性もあります。ワークショップ終了後に自分に降りかかる災いを考えると「ここは口をつぐむのが賢明」と思ってもしかたがありません。

しかし、それは結局、自社のためにならないのです。自社環境分析では、弱みを正直にさらけ出した方が勝ちなのです。

「弱みは必ずある」を前提にする

逆に、自社の弱みや欠点ついて忌憚のない意見をお互いに出すことができれば、3C分析の精度は自然と高まると言えます。自社について客観視できているわけですから、おそらく市場環境や顧客、競合環境についてもフラットかつ冷静な視座で分析することができるでしょう。また、非難や誹謗中傷ではなく、ポジティブに自社の弱みについてメンバー間で語ることができるということは、それだけ改善意欲の高い、コミュニケーションのとれている組織であるとも言えます。さらに、実際にやってみるとわかるのですが、正しい3C分析さえできれば、その後のSWOT分析や基本戦略の立案はいたって簡単かつ正確に整理することができます。

世の中にパーフェクトな組織などひとつとしてありません。必ずどこかに問題を抱えています。それを見て見ぬふりをするのではなく、俎上に載せることでスタッフ全員が課題を共有することができ、積極的な改善提案へのスタートへとつながります。そのような意味で、業界環境分析(3C分析)はワークショップ全体の中でも最重要のフェーズであると私は考えているのです。

次回のブログも、引き続き「環境分析」についてご紹介します。

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