自分たちの手で広告を作ってみる
「自社のブランディングはちゃんとできているのか?」そう考えたときにおすすめするのが、「広告を作ってみる」ということです。ここで言う広告とは、新聞広告や雑誌広告など、いわゆる「紙媒体」の広告です。それも、実際には出稿しない、ブランディングを検証するためのトレーニングとしての広告づくりです。
作成にあたり大切なのは自分たちの手で作ることです。コピーライターやデザイナーに依頼してはトレーニングになりません。また、出稿はしないので、専用のデザインソフトは不要です。普段使われているWordやExcelがあれば十分です。手描きでもかまいません。サイズは、雑誌であればA4〜B5の1ページ、新聞であれば全五段といわれる、横幅は新聞1ページの横幅、高さは1ページの1/3のスペースを想定するのが作り易いでしょう。
広告の出来不出来はブランディングの精度の指標
広告は自社の商品を知らない消費者の関心を一瞬で引きつけ、興味をもって読み込んでもらい、購買などの行動を起こしてもらうのがその役割です。そのため、自社商品の提供価値を客観的に評価して、わかりやすく、そして魅力的に社会へ伝えることができるかどうかが成否の分かれ道になります。
提供価値を暗唱できるぐらいブランディングがきちんと構築されていれば、(デザイン上手い下手は別にして)訴求力のある広告がすぐ頭に浮かびます。しかし、競合他社の単純な後追いだったり、ターゲットや提供価値が曖昧な商品では、購買行動を起こすに至るまでの広告を作るのに難儀するのではないでしょうか。
ちゃんとした広告を作れるかどうかは、ブランディングの精度の指標になるのです。
広告づくりでは考えることがたくさんある
それでは、広告を作ってみましょう。あえて紙媒体の広告にしたのには理由があります。それは紙面の大きさが限られているからです。ホームページはページ数を増やせばいくらでも内容を増やせます。そのため、必要なことそうではないこと、なんでもかんでも掲載してもオーバーフローすることはありません。しかし、紙面の大きさが限られていると、自分たちの提供価値は何なのかを精査、あるいは優先順位付けする必要に迫られます。
さらに、キャッチコピーや見出し、リード文も考えなければなりません。紙面の中にダラダラと自社商品の特徴をベタ打ちしても誰も読んではくれないことは、およそ想像できるかと思います。提供価値のエッセンスをズバリ言い表したキャッチコピー、それを補足するリード文、そして、提供価値の根拠を説明する文章の見出しを端的に読みやすくまとめることで、はじめて読もうと思ってもらえます。
そしてビジュアルです。消費者の関心を得るには、イラストが良いのか写真が良いのか? 写真であれば、商品ズバリの写真が良いのか、それとも商品の利用シーンが良いのか? カッコよく見せるのか、安心できるイメージに見せるのか? キャッチコピーとの絡みは? など、さまざまな「見せ方」を考えなければなりません。新聞広告も雑誌広告も視覚を対象とした媒体ですから、「見せ方」はいちばん大切なポイントになってきます。
できあがった広告は他人に見せて評価してもらう
いかがでしょう?、提供価値を的確に表現した、わかりやすい広告はできましたか? その広告を見た消費者は、あなたの商品やサービスを選びたくなりますか? できれば第三者に見せて感想を聞いてみましょう。いまひとつの反応が返ってくるのであれば、それはブランディングの精度に甘さがあるということです。
広告はコピーライターやデザイナーに依頼すればできあがるものと思われがちですが、結局その良し悪しを判断するのは依頼主です。依頼主に精度の高いブランディングに基づく評価軸が無いと、ついつい見た目の奇抜さや綺麗さだけで選んでしまいがちです。私の経験上、「見た目にインパクトのあるものを」という形で依頼をされて成功した広告はまずありません。なぜなら、そこには提供価値のかけらも無いからです。
広告とは、ブランディングの社会に対する具体的なアウトプットです。まずは広告を自分の手で作ってみることで、自社の提供価値が多くの方に理解され、納得し、行動してもらえる(商品やサービスを選んでもらえる)ものなのかを検証してみましょう。さらに、それを知り合いや取引先にみてもらい客観的な評価をもらうことで、消費者の反応をシミュレーションすることも大切です。