2019年最初のブログということもあり、古賀デザインがかつてより提唱している「小さく始めるブランディング」について、補足を加えながらあらためてご説明したいと思います。

ブランドが認知されない=機会損失

「小さく始めるブランディング」とは、費用や人手をできるだけ抑えながらスタートできるブランディングの手法です。小さな会社やスタートアップ企業でも無理なくブランドづくりができることを目的としています。なぜこのようなことを提唱しているかというと、小規模な企業の多くがブランディングを導入していないため、せっかく魅力的な商品やサービスを持っていながら、その価値が消費者に認知されず、機会損失につながっているのを目にすることが多々あるからです。また、消費者もそれらの商品やサービスを知らないため、知名度だけで選んだそこそこの商品に満足している。そんな、お互いに望ましくない状況にあることを、ただただもったいないと感じているからです。

中小規模の企業がブランディングを躊躇するいくつかの理由

では、なぜ小さな会社においてブランディングが導入されないのか? その理由をあげるとすれば、以下のようなことではないでしょうか。

まず、ブランディングを導入すべき企業側からの視点です。「ブランディングは、それなりに名の通った企業のもの」さらには「高級品のもの」という、ブランディングに対する誤った認識がまだまだあるようです。しかし、実は「高級品=高値で取引されるもの」の中には、ブランディングに成功したからこそ高く買ってもらえている商品がたくさんあります。つまり、商品やサービスが高額で売れることとそのブランディングとは、「卵が先かニワトリが先か」の関係のようなものなのです。近年は店舗を持たずともインターネットで商品を売ることができるのは周知のとおりです。そのため、商品づくりのコンセプトやストーリーに共感して購入した商品ブランドが、実は家族経営の小規模な会社で作られているものだったりすることが多々あります。お客様の共感を得ることができれば、小さな会社の商品でも高く買ってもらえるのです。

また、「ブランディングは費用がかかるからウチには無理」と考えておられる会社もあるようです。確かに、社名や商品ブランドからロゴまで全てを刷新し、ビジネスツール類も全て新しくデザイン。さらに、マスメディア広告を使って派手な告知広告を行えば相応の費用が発生します。しかし、そればかりがブランディングではありません。ブランディングの核心は自社(の商品やサービス)が「選ばれる理由」を明確にすることであり、ロゴや広告づくりは二次的な作業です。そして、「選ばれる理由」づくりだけに絞れば、それはホワイトボード1枚あればできる作業です。さすがに無料とはいきませんが、外部のコンサルティングを受けたとしても、目が飛び出るような金額にはならないはずです。

さらに、ブランディングの本を開いてみると、やたらとカタカナの専門用語が多くて取っつきにくい感じがします。そのようなこともあって、日々の業務で手一杯な会社におかれては「ウチには必要ない」と理由なく避ける、あるいは先延ばしにすることもあるようです。そもそもブランディングという考え方は海外から入ってきたものなので、どうしても外来語が混ざるのは仕方がないとしても、ブランディングを社会に広めていくという点では、お手伝いするコンサルティング会社や広告代理店は、ブランディングをもっとわかり易く伝える責任があるかもしれません。

商売っ気たっぷりのコンサル会社や広告代理店にも責任がある

次に、そんなコンサルティング会社や広告代理店などの視点。彼らもビジネスですから、ある程度まとまった売上を期待できる会社、つまり大きな予算を組んでくれる中規模以上の会社にしか営業をしません。小さな会社には、営業にさえ来てくれないわけです。そのようなこともあり、小さな会社はブランディングに縁遠くなります。特に広告代理店がブランディングをサポートする理由は、社名やロゴの変更に伴う告知広告の媒体費を獲得したいことに他なりません。そのため、営業の対象はテレビCMや新聞の全面広告ができる資金力のある会社に絞られます。

また、大手の印刷会社には、内部組織としてブランディングをサポートする部署を持つところもあります。ロゴが刷新されれば、名刺、封筒、会社案内から商品パッケージまで多数の紙製品を刷り直す必要があるため、印刷会社にとってはおいしい仕事なのです。そのため、ホワイトボード1枚でできる「選ばれる理由」づくりはロゴや会社案内を新たにデザインするための「準備作業」と位置づけられ、予算の多くをデザインや印刷に投下させる提案が行われます。そして、この場合の営業の対象も「たくさん刷ってくれる」中規模以上の会社となるわけです。

実はホワイトボード1枚でできるブランディング

世の中で売られているブランディングの関連本も、これら広告代理店や印刷会社、ブランドコンサルタントによって書かれています。それらは上記のような営業する側の視点で書かれているため、ブランディングはどうしても「大掛かりなプロジェクト」に見えてしまいます(見せています)。また、コンサルタントによって書かれたものは、往々にしてカタカナの専門用語が多くて小難しく、「全てをプロに任せなければ手に負えない仕事」のように感じます(感じさせます)。

しかし、ブランディングは至ってシンプルなのです。自社(の商品やサービス)が「選ばれる理由」を明確にするだけであり、ホワイトボード1枚、大きな紙1枚があれば始めることのできるプロジェクトなのです。つまり、これが「小さく始めるブランディング」の本質です。そして、ブランディングで小さな会社でも世の中で際立つことのできる可能性が、インターネットやSNSの普及と比例して日に日に高まってます。1日でも早く始めることが大切なのです。

古賀デザインは、ブランディングの必要性を感じながらもなかなかきっかけを作れないでいる会社さんの背中を押してあげることを、自分たちのミッションと考えています。ブランディングによって開けるかもしれない新しい可能性についてまずは話してみませんか? お気軽にご相談ください。

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