前回のブログで、「ブランディングだからといって、必ずしもシンボルマークやロゴを新しくする必要はない」と書きました。シンボルマークやロゴを変えることがブランディングの目的になってしまうリスクを避けるためや、コストの面などからです。しかし、世の中のブランディングを眺めたとき、時としてシンボルマークやロゴを変更したほうが良いと感じる場合もあります。

よくあるのは、商品やサービスの提供価値のイメージと、シンボルマークやロゴから感じ取れるイメージに齟齬がある場合です。身につけることによりエネルギッシュで野心的な印象を与えるアパレルブランドなのに、華麗で繊細なロゴであったり、無添加で手作り感が売りの食品なのに、エッジの効いた無機的なロゴであったりすることです。「あえて常識的なイメージからハズす」というテクニックもないことはないのですが、その面白さがどれだけの人に伝わるかというリスクも伴います。

さらに個人経営の会社のシンボルマークなどでよく見かけるのが「意図が不明なデザイン」。これはブランディング以前の問題なのかもしれませんが、経営者が思いつくままに描いた「図柄」をそのままシンボルマークにしてしまった例。まるでアメーバーのようなシンボルマークでも、描いた本人の中にはモチーフがあるのでしょうが、それを見る私たちには何であるかが伝わらないばかりか、なんとも不気味で不安な気持ちになってしまいます。これでは事業にとってマイナス要因にしかなりません。

最後は「なんとなく座りが悪いデザイン」。ちゃんと提供価値とリンクしたデザインであり、デザイナーの手が入った形跡もあるのですが、微妙にバランスが悪い。見ているとなんだかムズムズしてくるようなシンボルマークやロゴです。一流と言われる企業のそれにも、たまに見かけることがあります。これも上記と同様に見ている人をなんとも不安にさせ、それは会社の安定感イメージにも関わってきます。多くは細部のバランスまで気を遣わない、あるいはそれを調整するスキルの足りないデザイナーに依頼した結果です。

「思い入れがある」「ハズしを狙う」「一応デザイナーに頼んだんだから」と理屈はあるかもしれません。しかし、ブランディングとはユーザーに認知されてどう感じてもらえるかであり、一方的な理屈で押し切ることは難しいものです。
自社のシンボルマークやロゴがユーザーにどのように見られているかを客観的に評価し、課題を感じた時には変更を考えることもまた必要です。

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